アメリカの国旗、星条旗の歴史

アメリカ合衆国の国旗は、世界でもっともポピュラーな旗のひとつです。20世紀の世界をリードしてきたアメリカは、日本ともゆかりの深い国。この記事では、アメリカ合衆国の国旗「星条旗」について紹介します。


アメリカの国旗

アメリカの国旗は、これまでに27回も変更されていて、世界で一番変化した旗です。当初、星の数とストライプの条(縞)の数はどちらも13で、これは独立時の州の数でした。その後州が増えるたびに、星と条をデザインに付け加えていました。


しかし、州の数は増え続け20州にまで増えたとき、アメリカは国旗の条を増やすのをやめました。縞を増やすのはデザインの面で限界があり、また細い線のストライプだと、遠くから見たときにピンク色に見えてしまいます。

結局元の13条に戻し、星の数だけを増やしていくことに決まりました。現在の国旗は、1960年にハワイ州が加わったときに変更されたデザインで、星の数は50個です。


アメリカの名の由来


アメリカ大陸は、15世紀の大航海時代、イタリアの探検家コロンブスが見つけた新大陸です。しかし、コロンブスはその地をインドだと思い込んでいて、最期まで自分が発見した島をアジアだと言い続けました。新大陸だと最初に主張したのは、アメリゴ・ベスプッチという探検家です。その結果、ヨーロッパでは、新大陸の全域を指す言葉として「アメリカ」が使われるようになりました。

ただし、18世紀以降アメリカの雅称(趣のある名前や呼び方)として、「コロンビア」も使われることがあります。(南アメリカのコロンビア共和国と同じく、コロンブスに由来する古名)日本のことを「大和」と呼ぶのと同じようなイメージです。また、このポスターに描かれている女性は、アメリカの象徴 コロンビア(Columbia)


ポール・スターによる第一次世界大戦のポスター。アメリカの女性の擬人化であるコロンビアを描いている。

World War I poster by Paul Stahr

第一次世界大戦時の愛国的ポスター

この、フリジア帽をかぶった女性コロンビアは、アメリカ合衆国を象徴する女性像・または擬人化されたイメージとされています。

※アメリカには、他にもアンクル・サムというアメリカ合衆国政府を擬人化した男性のキャラクターもいます。国の擬人化は、効果的な広告宣伝の手段として、政治的なパンフレットや美術作品など、伝統的に世界各国で使われてきました。


アメリカの独立とグランド・ユニオン旗


西洋人によって発見され、植民地となったアメリカ大陸。17〜18世紀には植民地戦争が起こり、英仏の衝突が続きましたが、フレンチ=インディアン戦争(七年戦争)の結果イギリスが勝利します。イギリスはフランスの広大な植民地を奪うことができましたが、度重なる戦争でたくさんの物資や兵士をアメリカに送り込んでいたため、財政が悪化していました。

そこで、植民地に重税をかけることにしたイギリス。これに反発した13の植民地がひとつにまとまり、理不尽なイギリスに反旗を翻します。こうして1775年にアメリカ独立戦争が始まり、翌年には独立宣言が発布され、1783年、アメリカは独立を果たしました。

独立戦争時、大陸軍(植民地軍)総司令官となったジョージ・ワシントンは、最初のアメリカ国旗を作りました。「グランド・ユニオン旗」と呼ばれている旗です。カントン部分(旗の左上部)に、当時のイギリスの旗「ユニオン・フラッグ」が描かれています。


しかし、独立戦争を仕掛けた側が、敵国イギリスの旗印を使うのはいかがなものか。と、軍部で不満の声が上がったのです。そうして、すぐに次の「ベッツィー・ロス旗」へと変更されました。


ベッツィー・ロス旗


ベッツィー・ロス旗は、星条旗第1号としてよく知られています。フィラデルフィアの仕立て屋、ベッツィー・ロス夫人の名前で呼ばれていますが、実は発案者については諸説あります。

現在は、ベッツィー・ロス夫人がデザインしたものではないという説が有力なのですが、彼女はアメリカのアイコンとしてとても有名で、住んでいた家『ベッツィー・ロス・ハウス』は観光地にもなっています。


アメリカの人々は国のシンボルとして、星条旗をとても大切にしています。アメリカの国旗制定記念日 Flag Day (6月14日)には、人々は家の前に国旗を飾り、学校では国旗の歴史と意味を教えます。たくさんの町でパレードやイベントが行われ、彼女のコスプレで現れる人もいるそうです。

アメリカの国旗はこの後も、州の数が増えるごとに星の数を増やしていき、現在の国旗にいたっています。

なんといってもアメリカ合衆国は、人民に主権があることが憲法で定められた初の国です。後の民主主義国家の成立に大きな影響を与え、また戦後には、アメリカがつくりだした映画や音楽、広告などの大衆文化が世界的な市場や影響力を持つことになりました。

世界の大国だけに、星条旗のデザインも、チリ🇨🇱 、ウルグアイ🇺🇾 、リベリア🇱🇷 、プエルトリコ🇵🇷 、キューバ🇨🇺 、パナマ🇵🇦 、マレーシア🇲🇾 、ギリシャ🇬🇷 など、さまざまな国の国旗に影響を与えました。


絵画で学ぶ世界の歴史

星条旗と共に描かれた、G.ワシントンの栄光


エマニュエル・ゴットリーブ・ロイツェ
『デラウェア河を渡るワシントン』
(1851年 メトロポリタン美術館蔵)


アメリカ独立戦争中の1776年、現アメリカの大陸軍はニューヨークを奪われ、絶望的な状況にありました。しかし、イギリス軍は追撃せず冬営に入ります。(冬を越すために作戦行動を一時停止して長期滞陣を行うこと)これを好機と見た大陸軍最高司令官のジョージ・ワシントンは、クリスマスの深夜にデラウェア河を渡り、攻勢に転じます。そして奇襲攻撃によってイギリス軍を突破し、独立派の首都フィラデルフィラを守り抜くことに成功します。

この絵画では、明らかに史実と異なった部分が多々あります。実際には、この時にはまだグランド・ユニオン旗が使われていて、星条旗は存在していませんでした。また、深夜にもかかわらず光が差しています。このような表現は、建国神話としての独立革命、また、ワシントンの英雄的側面を強調するための演出だと考えられています。

作者のエマニュエル・ロイツェは、1848年ヨーロッパ各地で革命(諸国民の春)が起こる中、ヨーロッパの革新的改革者達を勇気づけることを期待してこの油彩画を描いたそうです。

ちなみにこの絵には多くの模写品が存在し、そのうちの一つはホワイトハウスの西棟(ウエストウイング)に飾られているのだとか。


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