ジョージア
国旗のデザインの由来と意味
ファイブ・クロス・フラッグ(5つの十字架の旗)と呼ばれているジョージアの国旗。
白地に赤い十字の図案は、聖ゲオルギウス十字(セント・ジョージ・クロス)と呼ばれ、ドラゴン退治の伝説で知られる聖ゲオルギウスに由来します。これはイギリスの国旗の一部にも使われています。
また、大きな十字のまわりに4つの十字を配置する図案は、エルサレム十字と呼ばれる、十字軍に由来したシンボル。諸説ありますが、4つの小さな十字は『新約聖書』の副音書を書いた聖マタイ、聖マルコ、聖ルカ、聖ヨハネスをあらわすといわれています。
この国旗は、2003年に起きたバラ革命と呼ばれる民衆デモで、新政権の誕生にともない翌年に制定されました。12世紀から14世紀にかけてグルジア王国で使われていた旗が原型となっています。
※2015年、日本ではそれまでロシア語で「グルジア」としていた国名表記を、現在の「ジョージア」に変更しました。
ジョージアの国章
ジョージアの国章にも、盾の中に、白馬にまたがり槍でドラゴンを退治するジョージアの守護聖人、聖ゲオルギウスが描かれています。
盾の上には、主権をあらわす王冠、盾の両脇には2頭の黄色い獅子。
底部のリボンには、ジョージア語で「団結は力なり」と記され、リボンの左右にも小さな十字があしらわれています。
聖ゲオルギウスのドラゴン退治伝説
ゲオルギウスは、もともと古代ローマの青年将校でした。303年頃、ディオクレティアヌス帝の命令に反して信仰を捨てなかったため、パレスチナのディオスポリスで斬首され殉教したとされています。
有名な、ドラゴン退治の伝説はどんなストーリーなのでしょう。簡単に紹介します。
その昔、カッパドキアのある国に、毒気を振りまき人に咬み付く巨大な悪竜(ドラゴン)がいました。人々は、毎日2匹ずつの羊を生け贄にすることで、なんとかその災厄から逃れていましたが、羊を全て捧げてしまい、とうとう、人間を生け贄として差し出すことになりました。
そのくじに当たったのは、なんと王様の娘だったのです。話を聞いたゲオルギウスは、「私が助けてあげましょう。」と出かけて行き、ドラゴンの開いた口に槍を刺し、見事退治に成功します。
ゲオルギオスは、そのドラゴンを連れ帰ったため、村は大騒ぎになってしまいました。そしてギオルギオスは、人々にこう言い放ちました。
「キリスト教徒になると約束してください。そうしたら、このドラゴンを始末してあげましょう。」
こうして、その国の人々はキリスト教へと改宗したのです。
のちにディオクレティアヌス帝は、ローマ軍のキリスト教徒を全員ローマの神々に捧げなければならないという政令を発しました。ゲオルギウスも逮捕されて棄教を強要されるのですが、信仰を捨てなかったために斬首され、殉教したといわれています。
彼の伝説と図像は12世紀のビザンチン文化圏に急速に広まり、さらに十字軍を経由して西のキリスト教にも広まっていきました。イギリスでは特に親しまれ、13世紀のオックスフォード教会会議のあと、イングランドの守護聖人となりました。また、東方正教会では兵士の守護聖人として崇められ、ジョージアやモスクワの守護聖人でもあります。
このように、聖ゲオルギウスは東西ヨーロッパの両方で、キリスト教の伝説の不可欠な部分となっています。
※ゲオルギウスは、ジェルジオ、ゲオルギイなどとも表記され、ジョージは英語訳での表記となります。
ジョージアの国名について
守護聖人ゲオルギウス(Georgeus)の名前がロシア語になったという説や、「クルド人」を意味する「kurd」に地名接尾語の「-ia」で「クルド人の土地」となったという説などがある。
また、ジョージアは地理的には完全にアジアに属するものの、国民の意識としては「自分たちはヨーロッパ人」という意識が強いという。そのため、国旗の書籍などでは、アジアのページに掲載されたり、ヨーロッパのページに掲載されたり、またNIES諸国としてカテゴライズされていることもある。
ジョージアの歴史(略史)
ジョージアの地域は、古来、交通の要衝で、モンゴル帝国、オスマン帝国、サファヴィー朝ペルシャ、ロシア帝国など、他民族に何度も支配されてきました。
1801年にロシア帝国に併合され、1922年にソ連邦に加盟。ソ連崩壊に伴い、1991年に独立しました。
- 4世紀以降にキリスト教が国境とされる。
- 6世紀になると、東部地域はササン朝に、西部地域はビザンツ帝国に併合され、その後アラブ系民族の支配を受ける。
- 10世紀後半に統一王朝が成立するが、16世紀にオスマン帝国やサファヴィー朝の支配を受け、18世紀にロシア帝国に併合される。
- ロシア革命後の1918年に独立を宣言し、1922年にアルメニア、アゼルバイジャンとともにザカフカース社会主義連邦ソビエト共和国として、ソ連に加盟。1991年、ソ連が崩壊したときに独立。
- 2008年、南オセチアに攻め入り、ロシアの軍事介入を受け、ロシアが南オセチアとアブハジアの独立を認めたため、外交関係は断絶。2012年以降、関係改善に向けた動きがはじまっている。
ジョージアの国データ
正式名称 | ジョージア(旧名称グルジア) |
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英語表記 | Georgia |
漢字表記 | 具琉耳 |
首都 | トビリシ |
略号 | GEO |
面積 | 6万9700㎢(日本の約5分の1) |
人口 | 390万人 |
通貨 | ラリ |
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言語 | ジョージア語 |
民族 | グルジア系、アゼルバイジャン系、アルメニア系、ロシア系、オセチア系 |
宗教 | キリスト教(グルジア正教)など |
独立年 | 1991年にソ連邦から独立 |
国旗の比率 | 2:3 |
在留邦人数 | 45人 |