シリア
国旗のデザインの意味と由来
中央に2つ、緑の五角星を配した汎アラブ色の旗。
赤は自由への戦い、白は平和、黒は過去の植民地時代をあらわし、緑の2つの星は美しいアラブの大地と統一をあらわしています。
この旗はもともと、1958年にエジプトと結成したアラブ連合共和国で使われていて、2つの星はかつては両国を示すものでした(1961年解消)。その後1972年に、エジプト・リビア・シリアの3ヵ国によるアラブ共和国連邦が成立すると、3ヵ国は揃って同じ旗を導入しました。
アラブ連合共和国の国旗
中央の金色の鷹(タカ)は、イスラム教の預言者ムハンマドの出身部族クライシュ族をあらわします。
この連邦はゆるやかな連合体で国家統一は行われませんでしたが、1977年に解体されました。
解体された原因は、1977年(第四次中東戦争の後)、エジプトのサダト大統領が、アラブ諸国の敵イスラエルと単独で和解、友好条約を結びアメリカ寄りの外交を開始したことがきっかけです。これに怒ったリビアのカダフィ大佐は、即日エジプトとの合邦・同盟を解消しました。
そして、カダフィ大佐がリビアの国旗を緑一色に変更したことを皮切りに、シリアは1980年に、エジプトは1984年にこの国旗の使用をやめました。シリアは、以前エジプトと結成していたアラブ連合共和国で使っていたデザインを復活させ、それが現在まで続いています。
※ちなみにエジプトの国旗は、『クライシュ族の鷹』から『サラディンの鷲』にシンボルが変更されました。
シリアはアラブの春(2011年、チュニジアで始まった民主化運動)以降、現在も内戦状態にあり、国内にはこの国旗を掲げるアサド政権の他、急国旗を掲げる反政府勢力、クルド人勢力、トルコ、ロシア、アメリカの各国旗を掲げる軍事勢力が、それぞれの旗を掲げています。
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シリアの国名について
「シリア」という国名は、メソポタミア文明時代に栄えた帝国アッシリアの名にもとづいている。また、首都であるダマスカスは「世界でもっとも古くから人々が住み続ける都市」として知られている。
シリアの歴史
シリアは、アッシリアやヒッタイト文明の発祥地で、古くから東西文化の十字路として栄えた歴史を誇る国です。シリア人は、アラブ民族のうちでも工芸技術に秀でた存在といわれ、織物のダマスカス織、ダマシーヌとよばれる彫金細工、世界最古のガラス工芸にみられるように西洋の手工芸品のルーツとなっています。
2011年、チュニジアで始まった「アラブの春」といわれる民主化運動に触発されて騒乱が発生、内戦が激化しています。
- 紀元前4世紀頃、セレウコス朝が成立し、その後、ローマ帝国や東ビザンツ帝国が支配。
- 7世紀になるとアラブ系民族が勢力を広げ、661年にウマイヤ朝が成立し、イスラム文化の中心地となる。
- 750年に成立したアッバース朝では、中心地はバグダットに。十字軍やモンゴル帝国に支配されたのち、1517年からオスマン帝国の支配下となる。
- 1918年にオスマン帝国から独立するが、1920年から1946年の完全な独立までフランスの委任統治領となる。
- 1958年、エジプト・シリアによるアラブ連合共和国を結成するが、1961年にシリアは離脱。
- 1971年、クーデターによってアサド政権が誕生して長期安定政権を確立。2000年、息子に政権が移るが、反政府勢力との内戦が続いている。
- 2011年3月中旬以降、いわゆる「アラブの春」の中、各地で反政府デモが発生し、反政府勢力に過激派武装勢力なども参加してシリア政府当局との間で暴力的衝突に発展した。シリア政府と反政府勢力との間の暴力的衝突がその後も継続する中、2014年以降はイスラム過激派勢力である「イラクとレバントのイスラム国(ISIL)」が勢力を拡大して関係国がシリア情勢への関与を深めるなど、シリア内政は複雑化の一途を辿った。以降全土で約40~47万人以上の死者、約610万人以上の国内避難民が発生し、周辺諸国に約550万人以上の難民が流出したとされ(国連等)、今世紀最悪の人道危機と言われる状況が継続している。
- 2019年3月にISILが最後の拠点を失って以降も、シリア国内では、関係国も関与する形で、シリア政府軍と反政府勢力との間での軍事衝突が継続している。特にイドリブ地域では2019年4月にロシア等の支援を受けたシリア政府軍と反体制派との間で戦闘が激化して以降、多くの国内避難民が発生し、人道状況が極めて悪化した。
シリアの国データ
正式名称 | シリア・アラブ共和国 |
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英語表記 | Syrian Arab Republic |
漢字表記 | 叙利亜 |
首都 | ダマスカス |
略号 | SYR |
面積 | 18万5000㎢(日本の約半分) |
人口 | 2240万人 |
通貨 | シリア・ポンド |
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言語 | アラビア語 |
民族 | アラブ人、クルド人、アルメニア人、その他 |
宗教 | イスラム教(スンナ派、アラウィ派、ドゥルーズ派など)、キリスト教 |
独立年 | 1946年にフランスから独立 |
国旗の比率 | 2:3 |
在留邦人数 | 947人 |